国立劇場では、養成事業として、伝統芸能の後継者を育成しています
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第6期 歌舞伎長唄研修生が、この3月で3年間の研修を終え 卒業しますが
昨日 3月16日は、その研修終了発表会が 行われました。
演奏曲の選曲は、まず本人からの希望をきき
その中で、現段階の実力に適した曲を選びます。
入学当初は、海のものとも 山のものともわからない状態なので
研修過程で、唄方、三味線方、両方の勉強をして
卒業までに、どちらの専門になるか、決めることになります
今期の研修生は、卒業後、三味線方になるので
メインの発表曲は「二人椀久」
入学当時は、唄は全く経験がなく、興味もなかったのですが
3年間研修のうちに、唄も好きになり、
研修発表会では、ぜひ唄いたいとのことで「都風流」
と決まり、発表会目指して 頑張ってきました。
◆3月14日
初めて本番通りに、助演の先生も全員揃う「総ざらい」
↑こんな感じで、大稽古場で行われます。
↓これから「総ざらい」という緊張…第六期研修生 藤田和樹くん
◆翌日3月15日
国立小劇場の舞台にて、本番通り、舞台稽古
(前記事の通り、バタバタの一日で、写真を撮る余裕はありませんでした)
◆本番3月16日
↑助演者の多くが、歌舞伎に携わる先生方なので
芝居の時間などと合わせて 調整されます
↓今期研修生藤田君は、卒業後、うちの社中に入ることになったので
発表会の助演も、うちの社中で、 今回は 研修生も一緒の楽屋に入りました。
↓楽屋風景
手前から
講師・正園先生、卒業生・里松さん、助演・栄吉郎さん、研修生・藤田くん
主任講師は、里長師ですが
「二人椀久」も「都風流」も、間際までは、ほとんどの授業を私が担当指導したので
責任上、私も「都風流」のタテ、「二人椀久」のワキを弾かせて頂きました。
三味線の研修発表なので、二人椀久「堀留の長い長い難しいタマ」を全部弾き
それに合わせて、お囃子のお社中の先生に、手をつけて頂き、覚えて下さり
大変ご苦労をおかけし、研修生の晴れ舞台に、華を添えて頂きました。
スカ撥(弾き損ねて音が出ないこと)は、ほとんど全くなく
大入りのお客様から、タマの途中、何度も何度も 手が鳴り(拍手を頂くこと)
どうか無事に出来るよう、いつも通りに弾けるよう…と祈る私は
その拍手が何より嬉しく有り難く、涙がこぼれそうでした
精神力、体力が必要な大曲も、最後まで 力いっぱい弾ききり
彼としては、全力が出せたのではないかと この上ない喜びです
本当に、この藤田君は 本当に努力家で、何より素直なのが長所です。
「120%の確率で、絶対出来るようになるまで、自分で浚いなさい」という指導を守り
研修所では、朝から晩まで浚っていたそうで
本番が近づいて、三味線も撥も本番用に慣れる練習をしましたが
数日で、撥皮に穴をあけるくらい、弾きこんだようです。
そんな風に頑張る子ですから
一つ一つ階段を登るように、一つ一つの課題をクリアし成長しました。
発表会の大舞台でも いつも通りに弾けたのは
彼の努力の賜物です
彼の熱意に、唄・三味線・囃子の助演の先生方も 一丸となり
「なんとか彼の舞台が上手くいくように」とのお心 ありがたく
揃った演奏をして頂けたことにも、深く感謝しています。
二人椀久、タマが弾けるだろうか
この子なら、きっと頑張るだろうと その期待と祈りに、
ちゃんと応えてくれました。
↓演奏後、主任講師の里長師を囲んで。。
↑舞台に出るより、聴いてるだけでヘトヘトだよ…と里長先生。
藤田君、舞台の興奮 冷めやらず、耳が真っ赤♪
私、全エネルギー使い果たし、呆けた顔になってます。。。
彼が 本当にタテを弾くまでには、あと数十年かかるでしょうが
舞台のどの位置で弾こうとも、こうして芸に向き合うこと、
この姿勢のまま、成長していって欲しいと 心から願っていますし
これからも 彼の指導を続けて、私も一緒に成長していかねばと思いました。
晴れ舞台を温かく応援して下さった ご来場の皆様
お忙しい舞台の合い間に、ご助演ご苦労くださった先生方
日々、支えて下さった養成課、担当の増渕さん
国立劇場のスタッフの皆さん
本当にありがとうございました。
藤田君、よく頑張りました。
母のような気持ちで、
涙が出るほど嬉しいです。
鳥羽屋 里夕